会長挨拶

 
 ごあいさつ


 みなさま、こんにちは!
 このたび、第22回日本胎盤学会および第32回日本絨毛性疾患研究会を開催させていただくこと、大変光栄に存じます。日本胎盤学会の歴史は、私の大先輩であり直接指導を受けました吉田吉信先生と椹木 勇先生が、私の敬愛する滝 一郎先生とともに、胎盤電顕懇談会を立ち上げられた1964年に遡ります。私自身が研究を開始した1981年、研究手段はやはり電顕だけでしたのでとても親近感があります。その後、研究会、そして学会へと発展し、現理事長の高山雅臣先生が私に仲間に入るよう強く勧めていただいたのです。
 今回、胎盤学会のテーマは「仮説“胎盤は考える”を検証する」としています。昔から「胎児と胎盤、どちらが主人公か?」という議論が活発に行われており、独創的な主張として「胎盤は胎児付属物とされているが、本当は“胎児が胎盤の付属物である”と考えるべきではないか?」がもてはやされました。しかし、当時はその仮説を検証できる分子生物学の夜明け前であり、妄想に過ぎなかったのであります。ところが、この間、胎盤と胎児をめぐる基礎的・臨床的研究が飛躍的に発展し、もう一度この問題を議論できる状況となりました。胎盤は母体の置かれた情報をキャッチして“考え”、胎児へと情報を伝え、その発育・成長をコントロールしているのではないか?という魅力的アイデアです。そこで、胎盤をめぐる卵膜-羊水-胎児、それら相互の関連性についてのシンポジウムやワークショップを組みたいと思っています。
 もう一つのテーマは、絨毛性疾患研究会のテーマでもありますが、「絨毛外トロフォブラスト(EVT)の生理と病理、および腫瘍」です。この間、EVTの分子生物学、微小環境、シグナル伝達に関する研究が著しく進歩しました。そこで、主としてEVTに焦点を当てたシンポジウムをもちたいと思います。さらに、EVT(中間型トロフォブラスト、IT)の腫瘍(PSTT, ETT)および類腫瘍性疾患(過大着床部、着床部結節)をしっかりと勉強できる場にしたい。各施設から典型的な、あるいは診断の難しいPSTT、ETT、過大着床部、着床部結節の病理標本をお持ちいただき、検鏡していただく場を設定いたします。そして、病理からはその専門家であるJanice M. Lage教授(米国ミシシッピー大学)、福永眞治教授、南口早智子先生にご出席をお願いしていますので、みなさま、ぜひともお楽しみください!
 さて、学会会場は、京都大学医学部の基礎医学部構内にあります「芝蘭会館」とさせていただきました。とても落ち着いた雰囲気の場所ですので、初秋の京都を感じつつ、熱くデイスカッションいただけると期待いたしております。多数の先生方のご参加をお待ちいたしております。また懇親会では、今回、京都の銘酒を準備いたしますのでぜひご賞味ください。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

  京都大学大学院医学研究科婦人科学産科学教授
            小西 郁生